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【プロ直伝】着物レンタルことはじめ:男性向け袴と着物の選び方

はじめに

は、主として結婚式や成人式などのフォーマルなシーンで多くの男性が着用する日本の伝統衣装です。結婚式の新郎や来賓などの礼装としてだけでなく、よそ行きや各種パーティ、茶会などの普段使いの衣装としても重宝されています。本記事では、シーンに応じた袴の選び方から素材や色のバリエーション、さまざまな着こなしのコツまで、幅広く解説します。和装に不慣れな方でも、この記事を通じて袴の魅力を知ることで、袴スタイルを楽しんでいただけることでしょう。

男性の袴と着物の選び方

は、羽織や着物と共にハレの日の男性の装いとして重要な位置を占めています。袴は羽織や着物に合わせて、着用する場の格式にふさわしいものを選ぶのが作法です。着物の格式は大きく分けて、第一礼装(正装)、準礼装、略礼装(セミフォーマル)、普段着(カジュアル)に分けられます。ここでは、羽織や着物と袴を選ぶ際のポイントを紹介し、結婚式に適した黒紋付羽織袴や色紋付羽織袴について解説します。

結婚式での紋付羽織袴の特徴

結婚式で新郎が着用する紋付羽織袴は「黒紋付羽織袴」と呼ばれるもので、男性の礼装として最も格式の高い第一礼装(正装)です。羽織と長着(羽織の下に着る着物)は、正絹の黒羽二重に五つ紋が入っているもので、袴は黒または茶の縦縞の絹織物をはくのが正式とされています。

結婚式では、新郎の衣装は花嫁の衣装の格式に合わせるのが作法です。花嫁が最も格式の高い婚礼衣装である白無垢や色打掛、黒引き振袖などをまとった場合は、新郎も最も格式の高い男性の礼装である黒紋付羽織袴を着ることが礼にかなっています。花嫁が振袖や新和装などの衣装の場合は、新郎は白紋付羽織袴やグレーの紋付羽織袴を着用しても構いません。

紋付羽織袴では、五つ紋が最も格式が高いとされ、結婚式に着用するのは染め抜きの五つ紋付羽織袴であることが重要です。「紋」の数で格式が決まるため、一つ紋や三つ紋では格式が下がってしまい、結婚式にはふさわしくありません。また紋も、染め抜きのものは織りや刺繍のものよりも格が上とされています。白紋付羽織袴やグレーの紋付羽織袴を着用する場合でも、結婚式では紋は五つ紋にするのが作法です。

結婚式で色紋付袴を着る場合

地色が黒以外の紋付羽織袴は、「色紋付羽織袴」と呼ばれています。黒以外の色合いの無地か目立たない柄入りのものが基本です。格式は黒紋付よりも下とされ、白やグレー以外にもベージュや茶系、緑系などさまざまな色合いのものがあります。女性の礼装で言えば、黒紋付羽織袴は黒留袖に当たる正装で、色紋付袴は色留袖と同等で準礼装に当たります。

色紋付羽織袴を新郎が着てもいいのは、新婦が準礼装をしている時だけなので、披露宴でのお色直しや二次会、前撮りなどで新婦が振袖などを着た時になります。新郎の色紋付羽織袴は五つ紋付がふさわしく、袴も仙台平の縞柄のものを身に付けるのが作法になります。来賓の場合は、一つ紋でも三つ紋でも構いません。

成人式と卒業式の袴の選び方

一般男性が袴を身に付ける機会というのは限られていますが、成人式卒業式はその数少ない機会の一つです。これらの式典で袴を着用することは、成人や卒業に臨んでの決意や喜びを表す手段となります。ここでは、成人式と卒業式のための袴の選び方について解説します。

成人式の袴の選び方

成人式はフォーマルな式事に当たるので、五つ紋の黒紋付羽織袴色紋付羽織袴がふさわしいです。成人式の羽織の場合は祝いの場であるため、金銀の糸で刺繍が施されたものや、龍や鷹などの派手な柄が描かれたものなど、目立つデザインのものも最近は登場しています。袴も豪華な金襴地のものがあり、シックな古典的なものから現代的な派手なものまでさまざまなスタイルがあります。

成人式で着る袴を選ぶ際は、着る人の個性が現れるものなので、好みのスタイルを選ぶのがいいでしょう。若々しく明るい色紋付羽織袴でもいいし、シックに伝統的な黒紋付羽織袴で決めるのもいいものです。一度だけの成人式を、袴姿で存分に楽しんでください。

卒業式の袴の選び方

大学の卒業式に女子学生が袴姿で出席する光景は珍しくなくなりましたが、最近は男子学生も袴姿で出席する人が増えているようです。若い人の間でも、伝統衣装が見直されてきているようですね。ここでは、卒業式にふさわしい袴の選び方をご紹介します。

卒業式は、フォーマルな場ではありますが結婚式ほど格式は高くない式事なので、ここで着用する礼服は第一礼装である黒紋付羽織袴でもいいし、卒業生代表で壇上に上がったりすることがなければ、準礼装の色紋付羽織袴でもいいでしょう。その場合は、羽織は明るい色合いながらも落ち着いた感じのものを選ぶのが適切です。袴のスタイルは、縞袴にすれば準礼装、深みのある紺やグレー、緑などの無地にすると略礼装になります。

男性の袴姿では、羽織ひもの色や大きさ角帯の色柄を工夫することで、羽織袴姿の印象を変えることができます。また足元は、フォーマルでは白足袋を履くのが基本です。草履は畳表やエナメル製の草履を着用し、雪駄の場合は鼻緒は白にします。和装小物に注目して、袴姿を仕上げてください。

羽織袴の柄や地紋の深掘りガイド

羽織袴は柄や地紋によって、その印象が大きく変わります。ここでは、羽織袴の柄地紋の特徴について解説します。

羽織袴の素材と仕立て方の特徴

男性の正装である黒紋付羽織袴は、色や柄であまり目立った違いはありません。色は黒と決まっているし、家紋以外の文様が入ることもないためです。違いが出るとすれば、素材の違いによる質感や、季節に合わせた仕立て方の違いによります。

袴は、仙台平の縦縞のものを合わせるのが基本ですが、縞には棒縞、子持ち縞、両子持ち縞の三種類があります。生地の色や縞の色には繊細な違いがあるので、羽織や長着と袴の合わせ方で、個性を出すことができます。

また色紋付羽織袴の場合は、素材や仕立て方のほかに地紋があるかないかという違いがあります。地紋とは生地に織り込まれる細かな模様で、控えめながらも深い印象を与えることができます。

羽織袴の地紋の特徴

羽織や長着、そしてには、地紋入りのものがあります。無地の着物も地紋があることによって、全く違った趣を呈します。地紋の種類には多様なパターンがあり、それぞれに独自の意味や背景が存在します。その一部を以下に紹介します。

  • 紗綾形(さやがた): 梵字の「卍」を斜めに変形して連続させた紗綾織りのパターンの一つで、「万字繋(まんじつなぎ)」とも呼ばれます。上品で落ち着いた印象があり、フォーマルな場だけでなくビジネスシーンにも適しています。連続して続く紋様であることから、「不断長久」(途絶えずに長く続く)という意味を持ち、子孫繁栄や事業の拡大を象徴する吉祥文様の一つになっています。吉祥文様とは縁起の良い意味を持つ文様のことを言います。
  • 市松模様(いちまつもよう): 交互に色が変わる格子柄で、正方形が上下左右に続くことから、子孫繁栄や事業拡大を意味する吉祥文様とされています。カジュアルからフォーマルまで幅広いシーンで活用できる万能パターンです。江戸時代中期の歌舞伎役者の佐野川市松が舞台衣装に用いたのが評判になり、市松模様と呼ばれるようになりました。
  • 麻の葉(あさのは): 正六角形の無限連続を基に図案化した文様で、麻の葉を思わせるデザインからこう呼ばれています。麻の旺盛な成長力から強い生命力を象徴し、健やかな子どもの成長を願う意味が込められて使用されてきました。そのため、成人式や子供の祝い着の吉祥柄として使われることが多いです。

「ゆめや」がご用意した、日常的なおしゃれ着として着ていただける、ひげ紬の羽織と縞袴です。鼠色の正絹の紬の着物と、同じ糸を使ったひげ紬で仕立てられた羽織に、縞袴をコーディネートしました。薄いグレーと薄い茶のストライプが織り出された袴です。縞の太さが細いものと太いものがあって、やわらかな動きのある縞模様になっています。

正絹と紬の袴、材質で選ぶスタイル

は着用する場面に合わせて、色柄と共に素材を選ぶことが大切です。正絹(しょうけん)紬(つむぎ)は袴の素材として特に人気がありますが、それぞれ異なる特性と魅力を持っています。ここでは正絹と紬の袴に焦点を当て、それぞれの素材がどのように男性の装いを引き立てるかを解説します。

正絹の袴の魅力と選び方

正絹は、その滑らかな質感と上品な光沢で知られており、結婚式や成人式などの格式の高いフォーマルな場に最適な素材です。正絹の袴を選ぶ際は、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。

結婚式や成人式などのフォーマルな場では、男性の正装として紋付羽織袴を着用するのが作法です。羽織や長着が正絹の黒羽二重であれば、袴の品質も合わせて正絹の仙台平などを選びます。仙台平は縞柄が特徴ですが、縞の色にはさまざまなバリエーションがあるので、羽織や長着に合わせて選ぶと洗練された印象になります。

フォーマルな場でも成人式などでは、着る人の好みに応じて色紋付羽織袴を着用することもできます。色紋付羽織と袴の素材を別なものにすると、カジュアルダウンした装いになります。色無地の袴でも地紋が織り込まれたものであれば、光の当たり方によってさまざまな表情を見せるため、その変化を楽しむことができます。

もちろん、成人式で黒紋付羽織に正絹の仙台平の袴姿でも構いません。こちらの方が、礼装として格が上になります。また正絹の袴は、保湿性と吸湿性に優れているので、長時間着用しても快適さを保つことができます。これは長時間にわたるイベントで、特に重要な要素です。

紬の袴で楽しむカジュアルな着こなし

紬(つむぎ)は、生糸(きいと)として出荷できないくず繭から紡ぎだした、節のある紬糸で織った布です。染色した糸を縦糸と横糸に配置してさまざまな柄を織り出すため、「先染めの着物」とも呼ばれます。その丈夫さから普段着や農作業着に用いられていた素材で、飾らない風合いが魅力です。紬から仕立てた袴は、男性の普段着やおしゃれ着としてよく使われています。ただし、礼装には使えません。羽織や長着物と合わせて、お茶会や社交の場、友人の結婚披露宴などで略礼装として使うことができます。

紬には、大島紬や結城紬、久留米島紬など、さまざまな産地の違いによる独特な魅力を持ったものがたくさんあります。 紬の袴は羽織との組み合わせやカジュアルな角帯と合わせることで、シーンに合わせたおしゃれを楽しむことができます。

袴の現代的アレンジ

袴姿をよりカジュアルな場に取り入れようという動きもあります。ここでは野袴の改良型ファッションアイテムとしての袴スタイルに焦点を当てて解説します。

新次元の野袴スタイル

普段着の着物としては作務衣(さむえ)甚兵衛が知られていますが、最近では作務衣の代わりになるような動きやすい袴姿として、野袴(のばかま)が改良されて用いられています。野袴は、江戸時代に武士が旅行する時にはいたり、農民が外出着や仕事着として使用してきました。

野袴を普段着として用いる場合は羽織は必要がなく、着物と袴だけで問題ありません。野袴と合わせて着る着物は、半着(はんぎ)と呼ばれる丈が膝あたりまでしかない短いもので、かさばることなく袴を身に着けることができる利点があります。改良型の野袴は、前にチャックが付いたり両脇にポケットが付いたりと、ズボン感覚ではくことができるので、日常の作業着として使いやすいものになっています。

日常的なファッションとしての袴の着こなし

袴をファッションアイテムとして日常生活に取り入れようとする動きもあります。例えば、着物の下に詰襟の白いシャツを着て袴をはけば、明治時代の書生風ファッションが出来上がります。書生スタイルの袴は平袴ですが、これを野袴に替えてみても面白いかもしれませんね。

普段着としての袴の素材は木綿や化繊で良く、その方が汚れても自宅で洗濯もできるし、使い勝手のいいものになります。伝統的な着物に興味が出てきたら、ぜひ普段着にすることにチャレンジしてみてください。

「ゆめや」が提供する、日常的なおしゃれ着として着ていただける大島紬の羽織と着物に縞袴です。藍色に縦型の絣柄が織り出された、アンティークの大島紬の羽織と着物に、縞袴をコーディネートしました。小さな横長の長方形が縞のラインの中に並べて織り出された袴が、羽織と着物の絣柄の雰囲気にぴったりと合います。

羽織と袴、レンタルか購入か

袴を着用するためには、レンタルするか購入する必要があります。では、どちらをどのように選べばいいのでしょうか?ここでは、羽織や袴と必要な小物一式がセットになったフルセットレンタルの利点と注意点、購入時の袴と羽織の選び方について詳しく解説します。

フルセットレンタルをする際に知っておくべきこと

を着用したい時に、成人式や卒業式で一度しか使用しない可能性が高く、しかも予算があまりないならば、ほとんどレンタル一択になると思います。ここで購入のリスクを取るわけにはいきませんよね。そこでおすすめなのが袴と羽織のフルセットレンタルです。

フルセットレンタルには一般的に、袴はもちろん、羽織、長着、長襦袢、肌襦袢、角帯、足袋、草履または雪駄、そして小物類一式が含まれています。WEB上の着物レンタル店を探して、そのカタログから選ぶことになります。もちろん近くに着物レンタル店があれば、店舗を直接尋ねて実物を見て選ぶこともできます。こうしたパッケージを選ぶ利点としては、次のようなものがあります。

  • コスト効率が良い: 全てを一つずつ購入するよりも、費用や手間などのコストを抑えることができます。
  • 一貫性のあるスタイル: すべてのアイテムがプロのスタイリストによって選ばれているため、色合いやデザインがトータルでコーディネートされています。
  • 利便性に優れている: 別々にアイテムを探す手間が省け、また使用後のメンテナンスや保管の心配が不要です。

レンタルする際の注意点としては、早めに予約をすることが重要です。特に成人式や卒業式のシーズンには需要が高まるため、希望するスタイルのアイテムが早期に予約で埋まる可能性があります。また、サイズ合わせをしっかりする必要があります。試着できるならばいいのですがそれができない場合は、WEBの情報だけで自分で責任をもって袴のサイズを選択しなければなりません。レンタル契約を締結する際には、トラブルが発生した時のためにキャンセルポリシー、損害賠償責任、返却期限などの条件を事前に確認しておくことが大事です。

袴の購入時における注意点

袴を購入するかどうかを決めるポイントは、予想される使用頻度です。茶道教室などに通っていて、稽古や茶会に袴姿で出席するような場合は、レンタルよりも購入した方がいいでしょう。そうすれば必要な時にいつでも着ることができ、いちいちレンタルする手間や費用が省けます。一方、結婚式や成人式などの礼服として、一度きりしか着ないという場合は、レンタルする方が合理的と言えます。

袴を礼装として着用するか普段着にするかで、袴の種類が違ってきます。袴を購入する場合にも、羽織や長着と小物一式がセットで販売されていることがあるので、初めて購入する場合はフルセットで購入するとすぐに使えます。

正装や準礼装、また略礼装の場合は、羽織や長着に家紋を入れる必要があります。仕立てをオーダーする場合は、家紋を染め抜きで注文することができますが、既製品を購入する場合は通紋が入れられている場合がほとんどです。通紋というのは、誰が使っても構わない紋のことを言います。五三の桐紋、花菱紋、蔦紋などがあります。レンタル品も、通紋が入っているのが一般的です。自分の家の家紋にしたい場合は、たいていは貼り紋で対応してくれます。

袴のレンタルや購入を検討する際には、これらのポイントを踏まえて最適な選択をすることが大切です。それぞれの調達方法には利点と注意点があるため、使用するシーンや頻度、予算を考慮して決定することをおすすめします。

まとめ

この記事では、シーンに応じた袴や着物の選び方着こなし方、そしてレンタルや購入のコツについて詳しく解説しました。普段着として袴スタイルを取り入れようという動きや、ファッションアイテムとして袴の持つ可能性についても触れました。ぜひ袴スタイルの魅力を知って、日常生活に取り入れてみてください。

著者情報

ゆめや通信編集部

執筆者

この記事はゆめや通信編集部が執筆しています。編集部では、企画・執筆・編集・入稿の全工程を担当・チェックしています。
田村芳子プロフィール画像

監修者 田村芳子

「アンティークきものレンタルゆめや」店主 着物コーディネート・着付け・和裁歴50年余。1985年に「アンティークきものレンタルゆめや」を創業。多くの人にアンティーク着物を着て頂くため、日々接客やコーディネート、着物の手入れを行っています。

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