神前式イメージ

【和装結婚式】神前式の基礎知識|歴史とその魅力、式の流れを解説

はじめに

神前式(しんぜんしき)は、日本古来伝わる結婚式の形式であり、主に神社などで行われる厳かな儀式を指します。この伝統的なスタイルは、新郎新婦が神様に対して結婚の誓いを立て、家族や親族がこれを見守ることで、神聖な結びつきを祝福するものです。

神前式はその格式の高さと、日本固有の文化・伝統を今に伝える大切な儀式であることから、今も多くのカップルに選ばれています。

神前式とは?由来と意義を知る

神前式の歴史は古く、その起源は1900年(明治33年)、後の大正天皇である皇太子・嘉仁親王の結婚式が行われたものが元祖とされています。

神前式は当初は限られた階層でのみ行われる格式高い結婚式でしたが、時代が変わるにつれてより多くの人々に受け入れられるようになりました。

神前式では新郎新婦が神前に結婚を誓い、家族の絆を確認し、二人の新たな人生の始まりを祝います。式中の儀式一つひとつには日本の自然崇拝や家族への敬意などが融合した独特の文化的意義を持ち、現代においてもその価値は見直されています。

結婚式のスタイルとしての魅力

神前式の最大の魅力は、その伝統美にあります。白無垢や色打掛といった伝統的な衣装が花嫁を一層美しく見せ、日本の美意識を象徴します。

神社境内の自然豊かな環境で行われる式は、厳かでありながらも心温まる雰囲気を醸し出し、参列者にも深い感動を与えます。神前式では祝詞奏上、神楽奉納、三三九度の儀式など、一連の流れが結婚式の神聖さを際立たせ、新郎新婦の新たな門出を盛大に祝福します。

なぜ今、神前式が注目されるのか

現代において神前式が再び注目を集める理由は多岐にわたります。一つにはグローバル化が進む中で、日本独自の文化や伝統に対する関心が高まっていることが挙げられそうです。

個性的でありながら意味深い結婚式を望むカップルが増えており、神前式独自の美しさや、家族や親族との結びつきを重視する価値観が人々に再び支持されているという点も一つ。

さらに近年のSNSの普及により、神前式による結婚式の様子や感動的なエピソードを共有しやすい時代になり、その魅力が広く伝わるようになったことも、人気を後押ししているといえるかもしれません。伝統的な和装や神社の美しい景観は、写真や動画で見る人々の心も捉え、神前式への憧れをかき立てます。

神前式の歴史

日本の結婚式における神前式は、その起源と発展を通じて、文化と伝統の継承者としての役割を果たしてきました。神社での厳かな儀式は、夫婦が神様へ結婚の誓いを捧げ、家族や親族がその瞬間を共有する日本古来の伝統です。

ここでは今一度、神前式がどのように始まりどのように進化してきたのかを掘り下げてみたいと思います。

始まりと発展:時代を越えた伝統

結婚の儀式自体は古く、原点とされているのは現存する日本最古の書物・古事記に記されている神話の時代にまで遡ります。日本を生んだ夫婦神、伊耶那岐命(イザナギノミコト)と伊耶那美命(イザナミノミコト)の国生みの儀式がそれに当たり、現代でも兵庫・淡路島の伊弉諾神宮などで、この神話を元にした神前式が行われています。

元々は家庭で行うのが通例だった結婚式ですが、先にも述べた通り1900年(明治33年)に宮中の歴史において初めて皇居内の賢所(かしこどころ)の神前で御結婚の礼が行われ、それに付随する形で一般の人々に向けた神前結婚式を日比谷大神宮(現在の東京大神宮)でも執り行いました。このことを契機に、神前で厳粛かつ神聖な儀式を行うことが広く民間にも受け入れられるようになりました。

この歴史的な転換点は、神前式が日本の社会全体に広がるきっかけにもなり、以後多くの新郎新婦がこの伝統を受け継いできました。時代の変化とともに神前式もその細部は少しずつ変化し、さまざまな文化的背景を反映させながら発展してきました。

現代日本における神前式の位置づけ

現代においても、神前式は日本の結婚式文化の中で重要な位置を占めています。

神前式は、結婚式を通じて日本の伝統美を体験できる貴重な機会。そのため伝統を尊重するカップルはもちろん、日本の文化に魅力を感じる海外のカップルにも人気が出ています。神社の荘厳な雰囲気、伝統的な和装、厳かな儀式の一つひとつは、他の結婚式では味わうことのできない、深い感動と記憶に残る体験を参列者にももたらしてくれます。

変遷を辿る神前式のスタイル

神前式は、その長い歴史の中で変遷を遂げてきました。

明治時代に一般民衆へも広がりを見せた神前式。大正時代には1923年(大正12年)の関東大震災によって神社が被害を受け、ホテルの宴会場に臨時で祭壇が設けられるという措置も。現代も行われる「ホテル施設内に常設の神殿で神前式を行うスタイル」もこのことがきっかけとなりました。

昭和から平成にかけて生活様式や家族構成などの変化が進む中で、神前式もまた新郎新婦の個性を反映し、また和装の選択肢も多様化しました。伝統的な白無垢から現代的なデザインを取り入れた色打掛まで、新郎新婦は自分たちのスタイルに合った衣装を選ぶことができるようになっています。

時代ごとの社会的あるいは文化的背景を反映しながら、神前式も進化しているのです。

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神前式の流れと特徴

日本独特の伝統と文化を色濃く反映した結婚式スタイルである神前式。神社あるいはホテルや結婚式場内の神殿で執り行われ、新郎新婦が神様に結婚の誓いを立てることで、その結びつきを神聖なものとして祝福します。

ここではそんな神前式の基本的な流れ、それに伴うマナー、そしてそこに用いる伝統的な衣装について、深く掘り下げていきましょう。

式次第の基本的な流れ

神前式は、古来伝わる一連の儀式に沿って進められます。一般的には以下のような流れで行われます。

  1. 参進の儀:新郎新婦と両家の家族が神職と巫女に続いて境内を神前へと進む、いわゆる「花嫁行列」です。
  2. 修祓(しゅうばつ):神職が祓詞(はらいことば)を奏上し、お祓いを行います。
  3. 祝詞奏上(のりとそうじょう):神職が神前に結婚を報告し、末永い幸福を祈ります。
  4. 祈祷(のりとり):この段階では、新郎新婦が神様に結婚の報告をし、祝福を求めます。
  5. 三三九度(さんさんくど):新郎新婦が大中小の杯で三回ずつ御神酒を酌み交わす契りの儀式です。「誓杯の儀(せいはいのぎ)」とも。
  6. 誓詞奏上(せいしそうじょう):新郎新婦が神前で誓詞を読み上げ、誓いを立てます。
  7. 玉串奉奠(たまぐしほうてん):新郎新婦が神前に対して玉串(榊の枝)を捧げ、二拝二拍手一礼。仲人夫妻と両家代表がそれに続きます。
  8. 神職あいさつ、退場:滞りなく終了したことを神職が告げ、一同が退場します。

神前式における挙式マナーとは

神前式におけるマナーは、その厳かさと格式を保つためにも重要なものです。

  • 静寂の維持:式中は厳かな雰囲気が求められます。携帯電話は必ず電源を切るかマナーモードに設定を。
  • 新郎新婦の服装:新郎は黒五つ紋付羽織袴、新婦は白無垢や色打掛などを着用します。これらは日本の伝統美を象徴するものです。
  • 参列者の服装:参列者も礼装を心がけましょう。男性はスーツや羽織袴、女性は留袖や訪問着、フォーマルなドレスやワンピースが選ばれます。ただ、新婦の衣装と被りやすい白、赤、黒は要注意
  • 写真撮影について:写真撮影は神社により制限されている場合が多数です。式中の撮影可否については事前に確認しておきましょう。

衣装:伝統的な着物の選び方

神前式において、衣装はただの装い以上の意味を持ちます。新郎新婦が選ぶ着物は、自身の個性だけでなく、家族の伝統や文化をも反映するものです。

  • 白無垢:新婦の純潔と無垢を示す象徴です。白色で統一された装いが特徴的です。
  • 色打掛:豊かな色彩と細やかな刺繍が施され、新たな生活への祝福を象徴します。
  • 選び方:式場の雰囲気や季節なども考慮して衣装を選びましょう。小物選びにもこだわり、全体の調和を考えましょう。

神前式はその独特の流れ、厳格なマナー、そして美しい衣装によって、日本の伝統美を今に伝える貴重な場として完成するといっても過言ではありません。新郎新婦として、自らの結婚を歴史ある格式高い儀式を通じて祝福してもらえるのが神前式なのです。

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神前式を選ぶメリットとデメリット

ここでは、神前式を選択する際に享受できるメリットと、考慮しておきたいデメリットを深く掘り下げます。

カップルにとっての大きなメリット

神前式には以下のようなメリットがあります。

  • 伝統的な儀式の体験:神前式は、古来続く日本の結婚式の伝統を体験する絶好の機会を提供してくれます。
  • 神聖な雰囲気:神社で行われる儀式は、他のどの結婚式スタイルとも比較できない神聖な雰囲気を持っています。
  • 家族の絆の深化:家族や親族が共にこの大切な日を祝うことで、家族間の絆がさらに深まります。

考慮すべきデメリット

しかし、神前式には以下のようなデメリットも存在します。

  • 準備の複雑さ:伝統的な儀式には多くの準備が必要です。親族など遠方からのゲストを迎える場合、その手配も複雑になります。
  • 費用:挙式費用だけを見ると教会で行うキリスト教式などよりも一見安そうに見えますが、和装代や着付け・美容代などが加わることで結婚式自体の費用としては案外高くなり、場合によっては他の結婚式よりも高額になる可能性もあります。
  • 人数制限:神社では参列できるゲストの数に制限があります。友人ゲストを参列不可としている神社も多いため、大規模な結婚式を望むカップルにとっては不向きかもしれません。

デメリットに対するアドバイス

これらのデメリットに対処するために、以下のようなアプローチがあります。

  • 計画の早期開始:式場の選定や日程の確定をなるべく早期に行い、準備期間を十分に取りましょう。
  • 予算の明確化と管理:結婚式の予算を事前にしっかりと計画し、必要な項目について優先順位をつけて管理します。衣装も持ち込みが可能であればレンタルや親から譲られたものなどを活用しましょう。
  • ゲストリストの精査:招待するゲストの数を慎重に決定し、神社の収容人数に合わせて調整します。

日本の美しい伝統と文化を背景に、厳かな雰囲気のもとで二人の結婚を祝う神前式。それだけに神前式特有の制約もありますが、デメリットを効果的に管理し、メリットを最大限に享受することで、忘れがたい結婚式を実現できるはずです。

まとめ

神前式は、その壮大な歴史と深い文化的意義によって現代もなお多くのカップルにとって有意義な結婚式の選択肢となっています。日本の伝統的な結婚式としての神前式は、単なる儀式という域を超え、二人の結びつきを神聖なものとして祝福してくれるものになっています。

今回の記事のまとめとして、改めて神前式を選ぶ理由、伝統を受け継ぐ意義、そしてこの神前式という大切な日を彩るための具体的なアドバイスといったものをお話しします。

神前式を選ぶ理由とその価値

神前式は、新郎新婦が豊かな自然と神前の静謐な空気に囲まれ、厳粛な雰囲気の中で結婚の誓いを立てる、非常に意義深い婚礼の儀式です。

そんな神前式がもたらす最大の価値は、日本の美しい伝統と文化に根差した儀式の一つひとつにあります。神聖な空間で行われる式は参列者にとっても忘れられない感動的な体験となるもの。新郎新婦自身も、伝統的な和装を身に纏うことで日本の美意識を体現し、このことが式の記憶をより鮮明なものにしてくれます。

伝統を受け継ぐ意義

日本の結婚式における神前式は、長い歴史を通じて受け継がれてきた文化的遺産ともいえるものです。こうした伝統は、家族の絆を祝福し、新しい生活の始まりを社会へ示すための重要な手段として機能してきました。

また、神前式には自然との調和、先祖への尊敬といった日本の価値観も反映しています。そういった神前式を選ぶことは、これらの価値を尊重し、未来の世代に伝える意志を示す行為でもあるといえるのではないでしょうか。

あなたの特別な日をかなえるために

神前式の日を特別なものにするために、以下の点を心がけていただければと思います。

  • 詳細な計画:神社選びから式のスケジューリング、衣装選びに至るまで、細部にわたり緻密な計画を立てましょう。可能であれば神社の空気にも親しむことで、当日も堂々と神前式に臨むことができるはずです。
  • 個性の反映:伝統的な要素を大切にしつつ、新郎新婦の物語や個性を取り入れることで、より思い出深い式にすることが可能です。白無垢や色打掛など、花嫁衣装は特にその思いを反映させやすいアイテムといえます
  • コミュニケーション:家族や親族、そして神社の関係者と密にコミュニケーションを取ることで、スムーズな式の進行と満足のいく一日を両立できます。

神前式は、単に伝統に従うこと以上の意味を持ちます。それは自分たちの結婚式を通じて、日本の美しい文化と伝統を称え、未来へと受け継ぐことを選ぶ行為でもあるはず。大切な日を美しく、意義深くするためにも、一つひとつの準備を大切にしてくださいね。

〈参考記事〉
https://amahashi.jp/shinzenshiki/
https://nihon-kekkon.com/article/knowledge/id33505/
https://www.tokyodaijingu.or.jp/kekkon/
https://zexy.net/mar/manual/kiso_style/chapter2.html
https://wedding.mynavi.jp/contents/special_contents/jinja_hiyou/

著者情報

ゆめや通信編集部

執筆者

この記事はゆめや通信編集部が執筆しています。編集部では、企画・執筆・編集・入稿の全工程を担当・チェックしています。
田村芳子プロフィール画像

監修者 田村芳子

「アンティークきものレンタルゆめや」店主 着物コーディネート・着付け・和裁歴50年余。1985年に「アンティークきものレンタルゆめや」を創業。多くの人にアンティーク着物を着て頂くため、日々接客やコーディネート、着物の手入れを行っています。

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