花菱立涌紋様に鳳凰孔雀の黒引き振袖【fuh01】

【披露宴】花嫁衣装に振袖はおかしい?引き振袖はOK?演出と考え方

はじめに

振袖は未婚女性の第一礼装で、文字通り振るように長い袖が特徴的な着物です。江戸時代から受け継がれた伝統的な衣装で、現代では成人式において20歳を迎えた女性が着る衣装として定着しています。

一方、結婚式の花嫁衣装として思い浮かぶ着物は何でしょうか。一般的には、白無垢や色打掛といった種類のものがイメージされるかもしれません。では、花嫁の婚礼衣装に振袖は向かないのでしょうか。

結論から申し上げると、仕立て直しを行うなどして披露宴でのお色直しの衣装としても活用できます。今回は、婚礼衣装として用いられる振袖についてご紹介していきたいと思います。

花嫁衣装としての振袖、引き振袖の魅力

振袖は未婚女性の晴れ着として広く親しまれ、その色鮮やかな柄や豪華な帯で、成人式という一生に一度の特別な日を彩ってくれる衣装となっています。

そんな成人式のイメージのある振袖を、花嫁衣装として披露宴に用いることの魅力は何なのでしょうか。

独身最後の記念として振袖を着られる

結婚式の披露宴に花嫁が振袖を選ぶ理由に、「成人式で着た思い出の振袖を、独身最後の機会である披露宴で着たい」「両親への感謝のしるしに、振袖姿を見せたい」といった心情的な面があります。

未婚女性の礼装である振袖は、当然結婚式の場が着用のラストチャンスとなります。成人式の時に親御さんと一緒に選んだ振袖を仕立て直して最後にもう一度着て見せたい、という気持ちは、立派な孝行心であるといえます。

「成人式のものを転用できる」以外の振袖の魅力

「成人式で着用した振袖をもう一度着たい」というわけでなくても、例えば結婚式に合わせて衣装をレンタルする場合でも振袖が選択肢として優れているメリットはあります。

披露宴のお色直しでは、文字通り鮮やかな色を衣装に取り入れたいところです。そうした観点で選択肢の筆頭候補となるのは色打掛ですが、色打掛はとにかく重量のある衣装です。その点、色打掛と比較すると軽いため着心地も良く、それでいて色打掛のような華やかさも持つ振袖が披露宴に映える衣装として選ばれるわけです。

ゲストと距離の近い披露宴では、身軽に動きたいものです。そうした意味でも、色鮮やかな振袖は重宝されます。

成人式の振袖と花嫁衣装の引き振袖の違い

花嫁衣装として振袖が活用できることはお伝えしましたが、具体的には成人式の振袖とどういった点が異なるのでしょうか。

成人式の振袖はおはしょりを作った「中振袖」

成人式などで着用する一般的な振袖は、帯の下に「おはしょり」という部分を作り裾を引きずらないように調整した中振袖と呼ばれるものです。おおむね袖丈の長さが100cmくらいのものを中振袖といい、同様に袖の長さによって小振袖、大振袖と区別されています。

小振袖は袴と合わせて大学の卒業式などで用いられている振袖。長いもので120cmほどの袖丈にも及ぶ大振袖が、「引き振袖」あるいは「お引きずり」として結婚式の披露宴などに用いられているのです。

引き振袖へ仕立て直すのは披露宴の風格に合わせるため

花嫁衣装には、結婚披露宴の主役ならではのボリュームが求められます。披露宴では振袖を着用している未婚女性のゲストがいる可能性もあり、その方と見分けがつかない程度の華やかさでは花嫁らしさが演出できません。

成人式で着用した中振袖を披露宴用に仕立て直す場合、裾や袖口にふき綿を入れたり、比翼をつけたり、おはしょりを作らず裾を引きずるような長さにしたり、といった工夫によって花嫁衣装としてもふさわしい豪華さを備えた引き振袖が完成します。

「大切な振袖なのでリメイクせずにそのまま着たい」という場合は、振袖自体を仕立て直す代わりに帯や結び方を豪華にしたり、髪型や髪飾りを華やかにしたりといった工夫が求められます。

ゆめやのレンタル引き振袖から1点ご紹介します。「花菱立涌紋様に鳳凰孔雀の黒引き振袖【fuh01】」は、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」でも使用された、アンティーク黒振袖です。花菱立湧紋様に菊や梅、上前に鳳凰、後裾に鶴、右肩には孔雀など、古典柄が手描き、手刺繍されています。帯も同じくドラマで使われた、オフホワイトの地に、亀甲、花菱、花丸紋様が描かれた丸帯を合わせました。着物も帯も、大正から昭和初期の作品です。

振袖の特徴と色の選び方

未婚女性の和装の象徴でもある振袖には、その若さを存分に強調できるような多種多様なスタイルと色があり、それぞれに異なる魅力を持っています。ここでは披露宴や結婚式前撮りなどで着用する他の衣装との違いと、それぞれの色が持つ印象についてご紹介します。

白無垢や色打掛との違い

白無垢は文字通り白を基調とした、婚礼衣装の中でも特に格式高いとされる衣装です。その白色が花嫁の純粋無垢を象徴するものとして神前式などの厳かな場にも好まれ、逆に白無垢以外は着用できないという神前式も存在するため、引き振袖を着たいと思っている方は挙式会場での着用が可能か、披露宴で着ることにするかなどを考えておく必要があります。

色打掛は、こちらもその名の通り色鮮やかで華やかな花嫁衣装です。カラーバリエーションも豊富にあり、その豪華な雰囲気が披露宴の場に映える着物ですが、先ほども少し述べたように白無垢や色打掛には重量があるのが難点です。

引き振袖は白無垢や色打掛と違って打掛を羽織らないため、ゲストにはっきりと帯を見てもらえる点が引き振袖ならではの特徴といえます。帯の種類やアレンジにこだわって、ご自身だけのオリジナリティーのある着こなしができるのがメリットです。

色で印象が決まる!引き振袖を選ぶ際のポイント

引き振袖の色選びは、花嫁のイメージを大きく左右する重要なポイントです。人気の色とそれぞれの意味を以下にまとめました。

  • :元々は引き振袖といえば「黒引き」とも呼ばれる黒色のものが一般的でした。品格と落ち着きを表す黒は、モダンな披露宴会場にもなじむ色です。黒地に金や銀の刺繍が施された振袖は、洗練された大人の魅力を演出してくれるはず。
  • :白無垢と同様、純潔と清らかさを象徴するのが白色です。伝統的なものでは白地に紅白の柄が入るものなどが定番です。白は新しいスタートの意味合いも持つため、結婚式にもぴったりです。
  • :黒や白と同じく日本の伝統色であり、華やかさと幸せを示す色として人気の赤。力強さと情熱の象徴となってくれる色でもあります。
  • パステルカラーやくすみカラー:近年ではまるで洋服のようなトレンドを取り入れた色の振袖も登場しています。淡いグリーンや薄い水色、くすみピンクといった振袖は、明るく柔らかでありながらモダンな雰囲気を作り出してくれます。

お色直しを行う際には、直前に着ていた衣装と大きく異なる色柄の振袖を選ぶことで、ゲストに新鮮な印象を与えることができます。色選びにおいてはご自身の好みのほか、肌の色味も大切です。パーソナルカラーなどにも着目して探してみるようにしましょう。

振袖の色は、花嫁としての個性と美しさを際立たせ、披露宴という一生の思い出に彩りを加えてくれる大切な要素となります。自分に似合う色の振袖を見つけて、最高の一日を迎えられるようにしましょう。

披露宴における振袖の演出

披露宴の場に華やかな雰囲気を付加してくれる花嫁衣装の振袖。ここでは、振袖を最大限に生かせる演出方法をご紹介します。

花嫁の振袖の着こなし方

披露宴会場で振袖を着る際には、以下のポイントを押さえておきましょう。

色と柄の選定
明るい色は華やかさを、深みのある色は落ち着いた雰囲気を演出します。柄についても大きな柄は存在感が出る一方で、小さな柄は繊細な印象を与えます。振袖の魅力は、豪華で繊細な刺繍で引き立つものです。披露宴のようなおめでたい場面に合う華やかさを重視して選ぶのもよいでしょう。

和装小物の使い方
振袖に合わせる和装小物選びは、全体のバランスを整える重要な要素です。帯揚げ・帯締めや筥迫、末広、懐剣など、帯周りの小物だけでも着姿の印象が大きく変わります。小物の色味を統一したり、着物と反対色をアクセントとして入れたりなど、差し色としての配色を考えてみましょう。

着付けのこだわり
プロの着付け師による着付けは、振袖の着姿を美しく見せるために欠かせません。正確な技術で着付けてもらえるため着崩れしにくいだけでなく、長時間着ても疲れにくい着心地の良さも期待できます。完璧に仕上げてもらっているという安心感でその日の表情にも余裕が出るかもしれません。

姿勢と所作
振袖を着て過ごす中での意識も大切です。美しい振袖姿を保つためにも、正しい姿勢を意識するとともに凛とした所作を心がけましょう。

振袖姿を演出するためのアイデア

せっかく振袖を着用するのですから、披露宴でもゲストに強い印象を残してもらいたいものです。そこで、振袖を活かした披露宴の演出アイデアを以下にご紹介します。

会場の装飾を振袖に合わせる
振袖の色やテーマに合わせた会場装飾を行うことで、統一感のある美しい空間を作り出すことができます。装花やテーブルクロスなど、式場によって色を演出できる場所はいくつかありますので確認してみましょう。

お色直しを披露宴途中に設ける
お色直しは、ゲストにサプライズを提供できる演出です。あまりにお色直しの回数が多いとゲストも疲れてしまうため注意が必要ですが、思い入れのある振袖があるのであれば挙式→披露宴のタイミングとは別にお色直しを設けるのもよいでしょう。

披露宴中の演出を和風にアレンジする
これは振袖に限らず和装での披露宴ならいずれも活用できるアイデアですが、例えばケーキ入刀をだるまの目入れに代える見送り時にゲストへ直接手渡すプチギフトを和菓子にするなど、披露宴で定番の演出を和のテイストにアレンジすると、振袖ならではの和の雰囲気をさらに高めることができそうです。

振袖の予算とレンタルの活用

披露宴における花嫁衣装として振袖を選ぶ際、予算面も気にしておかなければなりません。

ここでは振袖における購入とレンタルの違いと、予算に合わせた振袖選びに焦点を当ててお話しします。

振袖の購入とレンタルの違い

振袖を用意するにあたっては、大きく分けて購入かレンタルかという選択肢があります。

振袖をはじめとする着物類は、購入するとなるとかなり高価なものです。ただ、自分だけの一着を所有できるというメリットは当然レンタルでは決して得られるものではありません。記事の前半でもご紹介したように、成人式の時に購入した振袖を結婚式で仕立て直して引き振袖として着る、あるいはそのままの形で花嫁衣装として着る、といったことも購入した振袖なら実現できます。

ご自身で選んだ振袖が一生ものの記念品となることも購入の魅力といえるでしょう。ただし、難しい保管や定期的なメンテナンスが和装には求められるため、その点は着物初心者には悩ましいところかもしれません。

一方の振袖レンタルは必要な期間だけ借りることができ、着用後は返却すれば保管や修復などのランニングコストもかからないなど金銭的な負担が少ないことが第一のメリットです。一生に一、二回しか着ない振袖に多額の費用をかけたくない、という方にはぴったりの選択肢といえるでしょう。

前撮りなどを予定していればその都度違う色柄の振袖を着用できるなど、柔軟性があるのもレンタルの利点です。商品によっては小物類もセットで揃えられており、あれこれコーディネートを考える手間も要りません

予算に合わせた振袖選び

結婚式の準備において、予算設定は最も重要な部分の一つです。振袖を選ぶ際にもその意識は大切で、限られた予算の中で好みの振袖を見つける必要があります。

まずは予算の範囲内でどのような振袖が選べるかをきちんと把握することが大切です。予算が限られている場合、先に紹介したレンタルは賢い選択肢となります。レンタルなら購入するのに比べて低価格に抑えつつも、豊富な色や柄から振袖を選ぶことができます

帯や髪飾りなどの和装小物も予算計画に含めることが重要です。各アイテムが全体の印象を大きく左右するためバランス良く選びたいところですが、やはりレンタルの場合これらの和装小物がセットになっている商品も多いため、一つ一つを個別に手配するよりもトータルで安くなっていることが多数です。

「大胆な松に鶴が羽ばたく五つ紋付黒振袖【fuk45】」は、下り藤五つ紋のアンティーク黒振袖です。驚くほど大きな松に、飛び立つ鶴が、手描き、相良刺繍、金泥で艶やかに描き出されています。鶴が一様ではなく、それぞれに表情があります。もはや着物の柄でははく、一つの芸術品のような振袖です。

よくある質問と回答

披露宴で振袖を着たい!と思っても、花嫁にとっては分からないことだらけではないでしょうか。和装や振袖に関して疑問が浮かぶのは、それが初めての経験であればなおさらのことです。ここではそうした振袖や和装全般に関してよく挙がっている疑問を、それに対する回答とともにご紹介します。

振袖にまつわる疑問と回答

振袖に関して挙がる質問はさまざまですが、ここでは花嫁の皆さんがよく抱えている疑問に対して挙げてみたいと思います。

Q1: 振袖を選ぶ際のポイントは?
A1: 振袖選びで重要なのは、ご自身の個性と挙式や雰囲気に合った色や柄を選ぶことです。白や赤、黒といった伝統的な色から、パステルカラーやくすみカラーと呼ばれる現代的な色まで幅広い選択肢が振袖にはあります。帯や和装小物選びも全体の印象を大きく左右しますので、振袖とのトータルコーディネートで選ぶようにしてください。

Q2: お色直しに振袖は適している?
A2: お色直しにおける振袖の着用は一般的になっていますが、その多くは引き振袖です。成人式の振袖をそのまま着用したい場合、花嫁としての華やかさを小物や髪型などで演出する工夫をするようにしましょう。お色直しは、披露宴のハイライトにもなり、花嫁の魅力をさらに引き立てるものでもあります。タイミングも重要なので、計画をしっかり立てておきましょう。

和装にまつわる疑問と回答

和装全般に関する基本的な疑問にも答えていきます。

Q1: 和装を着る際の注意点は?
A1: 和装を着る際には、美しい姿勢と所作が重要です。特に披露宴などの花嫁衣装は皆に見られる着物ですから、立ち振る舞い一つにも気を配る必要があります。また、着崩れを防ぐためには適切な着付けが不可欠です。着付けは専門の知識と技術を要するため、大切な日の着付けはプロに依頼するのが無難でしょう。

Q2: 和装を着る他の機会について教えてほしい。
A2: ご自身が花嫁として臨む披露宴以外にも、友人や親族の結婚式のお呼ばれ、七五三、お茶会、若い方であれば成人式や卒業式など、さまざまな場面で和装を楽しむことができます。最近では若い方にも日常的に着物を楽しむ人が増えており、カジュアルかつ気軽に和装を着こなしているようです。

まとめ

今回の記事では、結婚式の披露宴で花嫁衣装として振袖を選ぶ際のポイントについてお話ししてきました。

披露宴における振袖は、白無垢や色打掛とともに花嫁衣装として定着しています。仕立て直した引き振袖が主流ではありますが、思い入れがある方はあえて成人式のままの振袖を纏い、髪型や小物のアレンジで花嫁としての華やかさを演出して披露宴に臨んでいます。

いずれにしても、振袖は華やかな装飾とともに、特別な日の記憶を美しく彩るものです。未婚女性として最後の晴れの日にふさわしい振袖を選び、結婚式の美しい一瞬を最大限に引き立てられるようにしてくださいね。

〈参考記事〉
https://myfurisode.com/blog/5523/post-5523
https://marieefleurir.com/blog/kekkon/kekkon24.html
https://kimono-rentalier.jp/column/kimono/kohurisode/
https://rental.madoi.co.jp/wedding/knowledge/style/
https://www.yumeyakata.com/bridal/set.html
https://wakon-style.jp/iroha/6381/

著者情報

ゆめや通信編集部

執筆者

この記事はゆめや通信編集部が執筆しています。編集部では、企画・執筆・編集・入稿の全工程を担当・チェックしています。
田村芳子プロフィール画像

監修者 田村芳子

「アンティークきものレンタルゆめや」店主 着物コーディネート・着付け・和裁歴50年余。1985年に「アンティークきものレンタルゆめや」を創業。多くの人にアンティーク着物を着て頂くため、日々接客やコーディネート、着物の手入れを行っています。

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