ライムグリーンにドロンワークと手刺繍の訪問着【hou95】

60代初心者向け!色無地の着物で始める魅力的なスタイル作り

はじめに

色無地の着物を手に取るとき、「自分らしい美」の探求が始まります。60代になると、色無地の着物は特にその人の内面の美しさや落ち着きを引き立てる素晴らしい選択肢となります。この記事では、60代の方々に向けて、色無地の着物の選び方や着こなし方、お手入れ方法などをご紹介します。これから、色無地の着物をより深く理解し、ライフスタイルに合った一枚を見つけるためのポイントを探求していきましょう。

60代のスタイルを彩る色無地の魅力

色無地は、シンプルさの中に深い魅力を秘めています。ここでは、60代の方に適した色選びも含めて掘り下げていきます。

美しさを引き立てる色無地

数ある着物の中でも、色無地は特殊な着物です。名前の通り柄が全くなく、生地に織り込んだ地紋と主に単色で染め上げたこの着物は、一見すると地味そのものです。

しかし、色無地はそのシンプルさにより、大人の女性の風格を自然体で受け止める奥深さがあります。色無地は、派手な模様がないことで生地自体の色味や地紋の美しさが際立ち、着用者本来の魅力を放つのです。それは、まっさらなキャンバスに描く絵画のようなもので、身に纏うことで完成する芸術です。

色無地を着こなせるのは、内面の豊かさや完成された自己を有する60代ならではの特権と言えるでしょう。

年代に応じた色選びのコツ

60代の色無地選びは、自分の肌色や体型、そして季節や着る場面に合わせた色選びをすることが重要です。

一般的に年齢毎の色の調整は、「明度」と「彩度」が鍵です。「明度」とは色の明るさのことで、「彩度」とは色の鮮やかさの具合です。例えば、ピンクでも、20代、30代の若い女性は「明度」、「彩度」の高い色が透明感があり適しています。年齢を重ねるごとに、「明度」と「彩度」を落とすことで、重厚感が出て大人っぽい印象となります。コツは、自分の年齢と雰囲気の色合いよりも少しだけ若めの色使いが大切です。若作りも格好が悪いですが、地味色にし過ぎると老けた印象になります。何事もバランスです。

「明度」と「彩度」が分かると、季節の色合いも分かります。春夏の色は「明度」、「彩度」が高めです。対して、秋冬は「明度」、「彩度」の低い色調が基本です。

合わせて、色の柔らかさでいえば、「色相」というものもあります。色味のことであり、端的にいえば、色に含まれる白の割合です。白が多い淡い色相は、柔らかな女性の雰囲気をよく表現します。反対に黒味が強くなると、強さが出てきます。

体型を考えるときに意識するのが、色の持つ「温度」です。白や暖色はいわゆる膨張色であり、大きく膨らんで見えます。対して、黒や寒色は収縮色であり、小さく縮んで見えます。

このようなことを踏まえて、ご自身のパーソナルカラーと照らし合わせて色を選ばれると良いでしょう。

若苗色に織り柄の一つ紋付色無地【hou81】
40年ほど前に仕立てられた、花菱の一つ紋付色無地です。花やツルの織り柄が可愛らしく、落ち着きのある上品な印象の着物です。お祝いごとを想定して、にぶい金色地に鳳凰の帯を結んでみました。

素材で選ぶ、60代向けの色無地

色無地の着物は、その素材によっても大きく印象が異なります。60代の方々にふさわしい色無地を選ぶ際、素材は非常に重要な要素です。素材によって季節感を表現したり、着心地が変わったりするため、適切な素材選びが、着物選びの楽しみの一つとなります。

深みのある正絹の色無地を楽しむ

正絹の色無地着物は、その独特の光沢と滑らかな質感で、高級感と上品さを象徴します。60代の方々には特におすすめの素材であり、年齢を重ねるごとに、その魅力をより一層引き出すことができます。正絹の持つ深みのある色合いは、落ち着いた雰囲気と品格を演出し、着る人の存在感を際立たせます。

正絹は、自然光の下で見るとさらにその美しさが際立ち、光の角度によって微妙に色味が変わる様子は、他の素材にはない魅力です。深みのある色無地は、特に光沢と色の深さが際立ち、着る人の肌色を美しく見せ、落ち着きと優雅さを演出します。また、正絹の着物は、保温性と吸湿性に優れているため、季節を問わず快適に着用することが可能です。冬は暖かく、夏は涼しげな着心地を提供してくれるため、一年中、正絹の着物の魅力を楽しむことができます。

季節を感じさせる着物の選び方

同じ正絹着物でも季節毎の着こなしを楽しむことができます。

春や秋などの季節の変わり目は、裏地のない単衣(ひとえ)の着物が最適です。

真夏は、高温多湿な日本の気候に適した、通気性に優れた軽やかな薄物と呼ばれる着物が最適です。絽(ろ)は、生地の横方向に縞模様のある着物です。対して、紗(しゃ)は格子状に織り目が出るのが特徴とされます。

冬から春先は、裏地のある袷(あわせ)の着物で暖かく過ごせます。

四季のはっきりとした日本ならではの文化であり、着物から季節の移り変わりを感じ取りながら、それぞれの季節に合った快適な着心地と美しい見た目を楽しむことができます。

着物のパーフェクトフィットを求めて

60代の着物選びは、自分の体型に合わせた色無地の着物を選ぶことが重要です。それに合わせて、着物において帯選びは全体の雰囲気を左右する選択です。ここでは、サイズと帯が与える着物の印象について解説していきます。

体型に合わせた色無地の選び方

60代になると、人それぞれの体型の特徴がより顕著になり、それに伴い、衣服を選ぶ際の考慮点も変わってきます。しかし、着物の良い点は洋服と違い体型にあまり左右されない点にあります。身丈と裄丈が合っていれば、大体の着物は着用が可能です。

色無地の場合、着物の柄もないため体型によって柄の位置が思った位置に来ないなどの問題もありません。このような点でも、色無地は万人向けの着物と言えます。

色に関しては前述の通りで、大柄の方が膨張色を選ぶとコンプレックスを強調する方向になりがちです。収縮色だと、モデルようなスラっとしたラインを演出し易いです。反対に、小柄の方は膨張色を選ぶことで、体型のバランスを図りやすくなります。

帯がの影響力

柄のない色無地にとって、帯はとても大きなイニシアチブを持っています。主張の強い帯でも、色無地であれば最大限その魅力を引き出してくれて、他の着物のように柄が喧嘩するということもありません。

反対に、シンプルな帯であれば、お互いの上品な雰囲気を高め合いどのようなシチュエーションでも嫌味なく、最適なコーディネートに近づけます。言い換えれば、色無地は「帯を活かす」着物なのです。

帯は、そのデザインだけがコーディネートに影響するわけではなく、その着付けによっても印象は変わります。高い位置に帯を締めれば足が長く見えるので、モデル体型を強調します。低い位置に締めれば、小柄の方は体型バランスを整えてくれます。

色無地を際立たせる小物使い

60代の方々が色無地の着物をより美しく、また個性的に着こなすためには、帯やその他の和装小物の選び方が重要になります。

印象を左右する帯締めと帯揚げとの合わせ方

前述の通り、色無地の着物は帯との組み合わせによってさまざまな印象を創出することができます。そこに合わせる帯締めと帯揚げは、着物と帯との間を取り持つ「繋ぎ」として、大きな役割を持っています。

帯締め、帯揚げとは

帯締めとは、帯を締めるときに必要な小物で、帯を固定するために使います。帯揚げは、帯の形を整えるために用いる帯枕を固定するのと、着付けの際に帯の間から覗く腰紐などを目隠しするための薄い布です。

帯締め、帯揚げの合わせ方

帯締めも帯揚げも、コーディネートを調和させることもアクセントにすることも出来ます。着物と帯が強烈な配色の場合、コーディネートとして散らかった印象になります。この場合は、双方の色を繋ぐ色使いをすることでバランスの取れた雰囲気になります。反対に、帯も着物も同系色の場合に帯締めと帯揚げにアクセントカラーを持ってくると、ぼやけていたコーディネートが一気に洗練されます。

個性を引き出す草履とバッグの選び方

色無地の着物を着用する際、草履、バッグなども全体のコーディネートをより魅力的にする役割を担っています。

草履とバッグの役割

フォーマルでもカジュアルでも、着物ファッションにおいては草履とバッグは不可欠です。草履とは外出時の履物で、少し踵が出るように小さめに履くのがおしゃれとされます。バッグは礼装用の場合は小ぶりなものが多いです。最低限度の化粧直しを持ち歩くためのものとして考えましょう。

草履とバッグの合わせ方

フォーマルの場合、帯地の装飾がされた草履とバッグがよく用いられます。金か銀が格式を示します。草履とバッグの柄は揃えるのが一般的です。カジュアルの場合は、着物と帯のバランスを考慮しながら選びます。色無地の場合、小物の主張性は高いので全体の雰囲気を見ながら調整しましょう。

ここで、ゆめやの商品をご紹介します。訪問着ではありますが、上品で落ち着きのある色柄のため遠目から見ると色無地のように見える、味のある一枚です。

ライムグリーンにドロンワークと手刺繍の訪問着【hou95】
手間暇のかかった手刺繍とドロンワークが美しい、ライムグリーン色の訪問着です。家紋は入っていません。裏は共八掛になっています。

多彩なシーンで活躍する色無地の着こなし

色無地は幅広いシーンで着用できる着物と知られています。ここでは、その特性を解説しつつ、着こなしについて考えていきます。

色無地の格は紋で決まる

色無地は万能な着物です。着物の世界では、礼装用の場合は通常、家紋を付けることが基本です。しかし、家紋を付けられる着物は限られており、特別です。色無地は無紋であれば、普段着として扱われる着物ですが、紋を付けることもできます。まず、この時点で色無地は特殊な着物であると言えます。

もう一点、着物の世界では格があります。格とは、立場やシーンに合わせたTPOのようなものです。格を左右する要素は複雑ですが、その一つが紋の数です。最上位を五つ紋として、三つ紋、一つ紋とあります。様々な着物がありますが、五つ紋を付けられる着物はごくわずかです。その一つが、色無地です。五つ紋の色無地は、非常に特別な式服として着用されます。

日常から特別な場まで

色無地程潰しが利く着物はありません。お稽古やちょっとしたお出かけであれば、無紋の色無地に名古屋帯や半幅帯を締めれば良いですし、観劇やちょっとしたパーティーなら帯を袋帯にすればよいでしょう。

お孫さんの七五三などは一つ紋の色無地でよいですし、親戚の結婚式にお呼ばれの時は三つ紋や場合によっては、五つ紋が適しています。このように、人生の多くのイベントで着られるのは色無地以外にはない特徴です。

色無地のお手入れと保管

色無地の美しさを長く保つためには、適切なお手入れと保管が必要です。特に60代の方々は、大切な着物を次の世代へと受け継ぐためにも、正しい方法でのお手入れと保管に関心が高いことでしょう。ここでは、色無地の着物を長持ちさせ、美しさを保つためのお手入れ方法と保管方法を紹介します。

着物を長持ちさせるためのお手入れ方法

着物は、その美しさと品質を長期間保持するために適切なお手入れが必要です。着用後の正しい取り扱いや定期的なメンテナンスは、着物を最良の状態に保つ鍵となります。

着用後の取り扱い

  • 陰干し:着用後は、汗や汚れを放置せずに、直射日光を避け、風通しの良い場所で着物を陰干しすることが重要です。これにより、生地へのダメージや色褪せを防ぎ、生地の新鮮さを保つことができます。
  • シミの対処:シミがついた場合は、自己処理を避け、早めに専門のクリーニング店へ相談しましょう。家庭でのシミ抜き試みは、生地を傷めるリスクがあります。

定期的なお手入れ

  • 専門店でのクリーニング:定期的に着物を専門のクリーニング店に持ち込むことで、汚れや汗を徹底的に落とし、生地を傷めずに清潔な状態を保つことができます。専門店では、着物の素材や染色方法に合わせた適切なクリーニング方法を選んでくれます。
  • 虫干し:最低でも年に2回は着物は陰干しをしましょう。着物の生地である絹は、虫が付きやすいという弱点があるからです。

正しい保管方法で美しさを保つ

着物を保管する際には、湿度と温度が重要なポイントとなります。直射日光や湿気は避け、通気性の良い場所で保管することが理想的です。また、たとう紙に包んで保管することで、色移りやホコリから着物を守ることができます。

季節の変わり目には、保管場所の環境をチェックし、必要に応じて場所を変えるなどの調整を行うことが望ましいです。また、防虫剤や除湿剤を上手く活用することが大切です。これにより、生地の劣化を防ぎ、美しさを保つことができます。

まとめ

この記事を通して、60代の方々向けの色無地選びの魅力とその大切なポイントをご紹介しました。色無地はそのシンプルさで、様々な場面やスタイルに合わせやすく、着物と帯、小物の組み合わせによって無限の可能性を秘めています。また、正しいお手入れと保管方法を守ることで、長年にわたり美しさを保つことができます。色無地の着物は、60代の落ち着いた魅力をより一層引き立てる素敵な選択肢です。これらのポイントを活かし、自分だけの色無地スタイルを楽しんでください。

著者情報

ゆめや通信編集部

執筆者

この記事はゆめや通信編集部が執筆しています。編集部では、企画・執筆・編集・入稿の全工程を担当・チェックしています。
田村芳子プロフィール画像

監修者 田村芳子

「アンティークきものレンタルゆめや」店主 着物コーディネート・着付け・和裁歴50年余。1985年に「アンティークきものレンタルゆめや」を創業。多くの人にアンティーク着物を着て頂くため、日々接客やコーディネート、着物の手入れを行っています。

最新記事

ブルーのぼかしに花々が総絞りで描かれた色振袖【fui58】

【2024年最新版】着物のプロが推す!青い振袖で差をつける成人式スタイル

はじめに 20歳という人生の大きな節目となる成人式に、美しい振袖姿で新たな門出を祝うことは、とても意義深いものです。数ある振袖の中でも、青は古くから人気の色であり、成人式でも多くの方に選ばれています。 青には、凛とした美 […]

ひとつ前の記事

七五三イメージ

【2024年】初心者親子のための七五三レンタル着物&楽々着付けガイド

はじめに 七五三は子どもたちの成長を祝う、日本の伝統的な通過儀礼です。このめでたい日には、お祝いの気持ちをさらに盛り立ててくれる着物をお子さまに着せてあげたいものですよね。 ただ、着物にあまり触れたことのない親御さんにと […]
試着予約フォームへ|絹100%のアンティーク着物を特別な日に、無料試着、簡単4項目の入力で完結!