
ゆめやの成人式:幻の染物、幻の辻が花とは?〜辻が花の振袖をレンタルしよう〜
大小たくさんの花々が、着物全体を流れるように描かれ、その花のひとひらひとひらが、ぷくりと膨れた絞りでできている、というのが「辻が花」のイメージでしょうか。
どうして皆さんは「辻が花」にあこがれるのでしょう?
良い着物だから?
絵柄がすばらしいから?
なんだか、「幻の辻が花」って聞いたような気がするから?
ぜんぶ正解です。
辻が花はすべて、着物全体にわたる続き柄で、絵羽模様になっています。模様のひとつひとつに、手絞りによる防染、刺繍、金箔がほどこされ、その立体感は見るものを陶然とさせるほどです。振袖や小振袖だと面積が増えますので、その分、手仕事も増え、感動も増えますね。

成人式の晴れ着に辻が花を着たいとお思いのお嬢さんもいらっしゃるでしょう。近々開催予定のパーティーに、辻が花の訪問着を着ていきたいとお思いのご婦人もいらっしゃるでしょう。
ゆめやのレンタルなら、全体に豪華な辻が花が描かれた着物から、裾だけにグルリと辻が花が描かれた付下げまでございますので、ご出席予定のお席がどのような格式でも、また、入学式や卒業式、七五三の付き添いでも、お召しいただけます。ご安心ください。
「良い着物」「絵柄がすばらしい」と軽くご説明したところで、本題の「幻の辻が花」と呼ばれる不思議についてじっくりとお話しいたしましょう。
もともとの「辻が花」とは、室町時代から江戸時代のほんの初めころまで行われていた、染めの技法です。
中国大陸から渡ってきた刺繍製品に日本人が惚れ込んで、まずは手刺繍が始まりました。その後、金箔が始まり、刺繍と金箔を組み合わせた縫箔が生まれます。染をほどこさない部分を残す防染の技法が生まれたのはこの後です。縫い締め絞り・竹皮絞り・桶絞りなどの高度な防染の技法が生み出されました。
色が入る部分と、色が入らない部分の構成で図柄を描き出し、そこに描絵、刺繍、摺箔(すりはく=金箔と接着剤で衣類を装飾する技法)などを重ねて、後年「辻が花」と呼ばれることとなる染物の技法が誕生しました。

ですが、江戸時代の中頃になると、糸や竹皮で防染するのではなく、糊で防染するという、友禅の技法が普及し、辻が花は急速に廃れて消滅したのだそうです。
手刺繍に始まり、絞り染めに加飾して流れるような絵柄を描き出した、辻が花の染色技術は、わずか100年ほどで姿を消してしまいました。現在残っているのは300点に満たないそうで、「幻の染物」と呼ばれ、博物館や美術館に展示されています。もしもこの時代の「辻が花」が手に入ったら、額に入れて飾っておきたいですね。
いったんは消えてしまった「辻が花」。
これを復刻しようと試みたのが、「久保田一竹」です。
1917年、東京は神田の骨董品屋さんの息子として生まれた一竹は、腕に技術を付けたいと、手描き友禅の世界に飛び込みます。手描き友禅の修行をしながら、日本画や人物画も学びます。修行の最中である20歳のころに訪れた東京国立博物館で、室町時代の辻が花染めに出会い、その美しさに魅了され、「辻が花」の復刻を決意しました。
決意からは長く険しい道のりとなりました。第二次世界大戦が始まったのです。出兵の翌年には終戦を迎え、捕虜としてシベリアに抑留されました。凍てつくような寒さの中でしたが、絵筆を作って絵を描いたり、薬品を盗んで布を染めたりと、辻が花復刻に向けての研究を怠ることはなかったそうです。
シベリアから帰国後も日本で長年研究を続けてきましたが、1962年、「幻の染物・辻が花」を完全に復刻することは難しいと判断し、一竹独自の辻が花「一竹辻が花」を発表することを決意します。

まずは生地です。もとは、正絹の練貫という生地が使われていましたが、これを正絹の縮緬で代用することとしました。染料は、もとは自然由来の草木染でしたが、合成染料を使うこととしました。
骨董商の息子として、ものを見る目が自然に育ち、友禅の技法・人物画・日本画を学び、シベリア抑留中も壮大な風景を目に焼き付けていた一竹が、いよいよ自らを表現するときが来たのです。
きもの全体に、流れるような絵羽模様を絞りで描いていきます。筆で色を足し、刺繍を足し、金箔を足し、「一竹辻が花」は完成に近づいていきました。
初めての個展は、一竹60歳の1977年。一竹の作品は「光のシンフォニー」と評されました。その後、数々の博物館に展示され、1990年には、フランス芸術文化勲章シュバリエを受賞しました。
生涯で80点の着物をデザインし、その40点を完成させたと言われています。2003年、85歳で永眠なさいました。現在は二代目・久保田一竹と、一竹工房で、作品を生み続けています。山梨県の久保田一竹美術館では、たくさんの作品に出会うことができますので、ぜひお訪ねください。
初代・久保田一竹の願いが、「辻が花の復刻と普及」であったためか、一竹の着物に魅了された工芸家・染色家が、一竹の技法をまねてつぎつぎと着物を作るようになりました。この着物が、現代広く普及している「辻が花」です。

どうでしょう?
「幻の辻が花」と呼ばれる所以を、少しでもご説明できたでしょうか。
ゆめやでは、初代・久保田一竹の作品のほか、たくさんの辻が花を、レンタルでご用意しています。
ゆめやのコレクションを、ちょっと覗いてみましょう。
まずは振袖です。
金糸・銀糸が織りこまれた朱色の生地に、流水と花々が描かれています。袖口から袂や背中に向かって描かれた枝垂れに意外性があり、たいへん見事な振袖です。

鮮やかな花浅葱色の正絹地に金糸と地紋様が織りこまれ、赤・黄色・緑のぼかしの上に、たおやかな花々が幻想的に描きだされた振袖です。

青味がかったグリーンの地色に地模様がゆらゆらと輝き、黄色や黄緑を多く使った辻が華は、淡い色ながらも圧倒的な存在感です。

エンジ色の正絹地に、花絵の扇が重なるように描かれています。着物の地色と、辻が花の絵柄が、くっきりと分かれている珍しいデザインです。

金糸が織り込まれたエメラルドグリーンの正絹地に、迫力あるデザインで花々が描かれています。花のひとつひとつが大きく、見応えのある振袖です。

振袖は絵柄が多く、目の覚めるような辻が花でしたね。
次は訪問着です。まずは、久保田一竹さんの作品から。
初代・久保田一竹 訪問着
金糸が織り込まれた白生地に、絞っては染め、絞っては染めの、手間の掛かる手仕事が繰り返され、見事なグラデーションに。さりげなく小花が浮かび上がっています。

ひきつづき訪問着のご紹介です。
紅藤色から瑠璃色へのぼかしがほどこされ、牡丹、桔梗、菊、桜、藤、紅葉などが、きものいっぱいに描かれています。

銀鼠色に辻が花の短冊が置いてあるかのようです。40年ほど前のきものだと思われます。ちょっとしたお出掛けに似合う、上品な訪問着です。

光沢のある練色の綸子地に、はんなりと花々が描かれています。生地自体がふっくらと織られているので、辻が花のたおやかさがいっそう引き立ちます。

こども用の着物も作りました。
黒地に、淡いオレンジやブルーのぼかしと辻が花の7才用のきものです。仕上げに金粉・銀粉も散りばめてあります。かわいらしさを超えて、大人の格好良さまで表現された祝着です。

いかがでしたか?
もうお腹いっぱいでしょうか?
それとも、実物を手に取って見てみたいと思われたでしょうか?
辻が花の魅力を感じていただくためには、実物をご覧いただくのがいちばんです。
着物はすべて、山梨本店や東京店でご試着いただくことができます。都内や近郊にお住まいの方は、ぜひお試しください。
お電話でのお申し込みはゆめや東京店 03-5422-8422 まで。
ご試着のお申し込み方法
この動画ではゆめや東京・山梨店での試着WEB予約の方法をご紹介します。
