ゆめやの成人式:幻の染物、幻の辻が花とは?〜辻が花の振袖をレンタルしよう〜
1917年、東京は神田の骨董品屋さんの息子として生まれた一竹は、腕に技術を付けたいと、手描き友禅の世界に飛び込みます。手描き友禅の修行をしながら、日本画や人物画も学びます。修行の最中である20歳のころに訪れた東京国立博物館で、室町時代の辻が花染めに出会い、その美しさに魅了され、「辻が花」の復刻を決意しました。
決意からは長く険しい道のりとなりました。第二次世界大戦が始まったのです。出兵の翌年には終戦を迎え、捕虜としてシベリアに抑留されました。凍てつくような寒さの中でしたが、絵筆を作って絵を描いたり、薬品を盗んで布を染めたりと、辻が花復刻に向けての研究を怠ることはなかったそうです。
シベリアから帰国後も日本で長年研究を続けてきましたが、1962年、「幻の染物・辻が花」を完全に復刻することは難しいと判断し、一竹独自の辻が花「一竹辻が花」を発表することを決意します。
まずは生地です。もとは、正絹の練貫という生地が使われていましたが、これを正絹の縮緬で代用することとしました。染料は、もとは自然由来の草木染でしたが、合成染料を使うこととしました。
骨董商の息子として、ものを見る目が自然に育ち、友禅の技法・人物画・日本画を学び、シベリア抑留中も壮大な風景を目に焼き付けていた一竹が、いよいよ自らを表現するときが来たのです。
きもの全体に、流れるような絵羽模様を絞りで描いていきます。筆で色を足し、刺繍を足し、金箔を足し、「一竹辻が花」は完成に近づいていきました。
初めての個展は、一竹60歳の1977年。一竹の作品は「光のシンフォニー」と評されました。その後、数々の博物館に展示され、1990年には、フランス芸術文化勲章シュバリエを受賞しました。
著者情報
執筆者 ゆめや通信編集部
この記事はゆめや通信編集部が執筆しています。編集部では、企画・執筆・編集・入稿の全工程を担当・チェックしています。
監修者 田村芳子
「アンティークきものレンタルゆめや」店主
着物コーディネート・着付け・和裁歴50年余。1985年に「アンティークきものレンタルゆめや」を創業。多くの人にアンティーク着物を着て頂くため、日々接客やコーディネート、着物の手入れを行っています。
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