
ゆめやの婚礼:そもそも「正絹」とは?
養蚕農家にとっては、上蔟から収繭が、お蚕さん飼育の最後の作業なので、一家総出でおこなっていたのだそうですよ。

さあ、やっと繭ができあがりました。ここから先の作業はご存じの方も多いでしょう。
まずは「乾燥」です。中に入っているサナギの命をいただき、カビや腐敗を防いでから貯蔵します。「サナギが蛾になってから繭を使えば良いのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、蛾になるときに、繭を溶かしてしまうのだそうです。
繭が溶けてしまうと、商品価値は無くなってしまいます。そこで、蛾になる前の繭を、生糸に使わせていただくのですね。
蛾になってから7~10日の寿命とはいえ、その命を犠牲にして糸をいただくのですから、お蚕さんに感謝しなければなりませんね。
乾燥のあとに「選繭(せんけん)」をします。汚れた繭や、厚みのない繭を取り除いていきます。選繭作業に合格した上質の繭だけで生糸を作っていくのです。
いよいよ「煮繭(にまゆ)(しゃけん)」です。
お蚕さんが口から吐き出した糸には、セリシンという粘着成分が含まれていて、この粘着力で糸と糸が接着し固まっています。糸を取り出すには、このセリシンを除去する作業が必要となります。セリシンはタンパク質ですので、お湯や蒸気で温めて溶かしていきます。

セリシンが溶けたところで、10個ほどの繭をひとまとめにして大鍋のお湯に移し、索緒ぼうきで表面を軽くなで、糸口を引き出します。まずはもつれた糸が出てきますが、次第に1本のきれいな糸にまとまり、ここを糸口とします。
糸口を繰糸機に移し、糸を巻き上げていきます。繭によって糸の長さは違いますので、ひとつ終わるとひとつ足し、糸口を見つけ出して、同じ太さの糸になるように巻き上げていきます。

こうしてできあがった糸が生糸です。巻き取っただけでは弱いので、撚って丈夫な生糸にしてから、織りあげた生地を正絹と呼びます。

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